様々な人間との色々な会話

在りし日の僕と僕以外の誰かの会話

思う事が在り、丁度、ゴールデンウィーク付近の時期に様々な人間と会う機会が在り色々な話を行なったので抜粋してみる。

「そう、話は変わるのだけど」
「何だい?」
「君は僕に電話をしないよね」
「そうだね」
「君は僕にメールをしないよね」
「そうだね」
「それ等に限らず僕に連絡しないよね」
「そうだね」
「ひょっとして君は僕が嫌いなのかな?もしかして僕が君に連絡するのは迷惑なのかな?」
「そんな事はないよ。そんな事はない。確かに僕から君に連絡する事は無いけれど、しかし特に君の事が嫌いなわけではないよ」
「特別に嫌いなわけではなくて普通に嫌いだとかなのかな?」
「特別にも普通にも嫌いではないし迷惑でもないよ。大体、嫌いだったり迷惑だったりしたら会わないよ」
「普通はそうなのだろうし君もそうなのかも、とも思うのだけれど、断らないだけなのかも、とも思ってね。君は断る事が苦手だろう」
「苦手、というか選択しない事が多いね」
「そんな君だからこそ、実は嫌われているのではないか、実は迷惑なのではないか、と思ってしまうのだよ」
「無駄に考え過ぎなだけだよ」
「ならば良いのだけれどね。君は電話やメールが嫌いなのかな?」
「特に嫌いではないよ」
「嫌いではなくとも連絡しないのは何故なのかな?」
「単純に習慣の問題だと思うよ。実際には問題だと思っていないけれど。要は僕に連絡を行なう習慣が無いのだよ」
「習慣?」
「そう、習慣。僕だって必要が在れば連絡するさ。けれど必要が無ければ連絡を行なわない。そもそも必要が無いのに何を連絡するのかが分からないのだよ」
「君が必要だと思う場合はどんな場合?」
「そうだね、依頼、質問、確認、くらいかな」
「日常的なコミュニケーションツールとして認識していないという事か」
「そうだね。そのような認識はしていないね」
「それでは殆んど連絡を行わないわけだね。けれど会わない知人友人の事が気にならないものかな?」
「全く気にならない、と言ったら嘘になるかもしれないな」
「全く気にならないと言ったら嘘になるかもしれない、という事は殆んど気にならないという事だね」
「そうだね、そうなのだろうね。それに『便りの無いのは元気な証拠』と昔の人間も言っているだろう?僕もわりと賛成でね。多少の起伏は在るかもしれないけれど基本的には大禍無く過ごしているのだろうと思っているよ」
「連絡不可能な程の問題が起こっているとは考えないのかな?」
「連絡不可能な程の状況で連絡されても困るだけだろう?解決したら連絡が来るだろうし」
「そうともばかり限らないと思うけれどね。例え返事が不可能でも励みになる場合も在るだろうし」
「そうなのかもしれないね。そうでないのかもしれない。それは個々人次第だね。それに」
「それに?」
「僕が連絡しなくとも連絡してくるからね。君のように。だから、それで充分かなとも思ってる」
「それはずるいよ。ずるくて汚くて卑怯だよ。この卑劣漢」
「そこまで罵詈雑言を浴びせる程の事なのかな」
「そりゃそうさ。君は一体全体何様のつもりだって話だよ」
「別に何様のつもりもないのだけれどね。僕からでも相手からでも連絡しているならば同じだろうと思っているだけだよ。どちらからでも連絡は連絡だろう?」
「連絡は連絡だけれど、けれど、それが駄目だって言ってるのさ。そのままでは何時か君は愛想を尽かされるよ」
「そういう事も生きていれば在るだろうね」
「君はそれで良いのかい?悲しい、とか淋しい、とか思わないのかな?」
「仕方ないよ。生きているのだから」
「生きているから、ではなくて君の意思と行動だから、だよ。それを生きている責任に転嫁するのは欺瞞だよ」
「では言い直そう。僕が僕として生きているから、だよ」
「諦めているのだね」
「そうなのかもしれないな。少なくとも僕が僕として生きる事を諦めるわけにはいかないからね」
「君らしい意見だね。小汚く腹立たしい、それでいて反論しようがないから尚更に腹立たしい意見だね」
「不愉快になられても困るな。僕は君が嫌いではないけれど恐ろしいとは思っているのだから。僕を脅えさせないでくれよ」
「相変わらず普通に嘘を吐くね。君が僕に恐れ脅えている?本当にそうならば僕は此程に苦労しないよ」
「苦労なんてしていないだろう?恐れ脅える僕の相手は楽なはずだからね」
「全然楽ではないよ。恐れ脅えているはずの君は挑発ばかりだからね。僕は常に自制心を総動員する事になる」
「君が退屈になって不愉快な思いをしないようにと、会話に彩りを加えているだけのつもりなのだけれどな」
「それが目的なら半分は成功だけれど半分は失敗だね。会話に彩りは添えられたかもしれないけれど僕は常に自制心を総動員して疲れる」
「楽しい物事の終りには心地良い疲労感と若干の寂寥感が付き物だよ」
「全然別物だよ」


これも一つの話。