諛言

僕は営業を行なう人間(以下、営業人)が苦手だ。特に営業人が嫌いというわけではない。わけではないが苦手だ。
ここで言う営業人とは職業が営業の人間だけではない。強く他人に良く思われよう、気に入られようとする人間全般の事だ。
営業をされると相手の事を顔で笑って心で嘲笑っているという感じがして苦手と思ってしまう。これは完全に僕の勝手な想像で僕の劣悪な精神状態に問題が在り、営業人に非が在るわけではない。けれど営業人に会うと常に思ってしまう。
営業人が苦手な理由は他にも在る。
営業人の多くは他人を誉めたり煽てたりする。その対象が僕でない時には何とも思わないが対象を僕にされると困る。とても困る。僕は誉められたり煽てられたりするのが苦手だからだ。だから誉めたり煽てられたりすると何となく居心地が悪くなる。
僕は誉められたり煽てられたりした時に幾度か「はぁ」とか「ふーん」などというような反応をしていたら「他人事みたいな反応だね。もっと嬉しそうにしたらどうかな」みたいな事を言われて困った過去が在る。嬉しいか嬉しくないかは僕が判断する事なのにも関わらず「嬉しそうにしろ」と言う人間は実際には僕の事はどうでも良く、只々自身の望む反応が欲しいだけなのだろうけれど、しかしそれを僕に要求する事は間違いなのではないかななどと思ったりもする。僕も多少は人付き合いの為の努力をしようと思わない事も無いので今は謝辞を述べるくらいはするけれど。とはいえ困る事には何ら変わりは無い。
営業人は悪気が故に営業するのではないだろうけれど、相対すると居心地が悪くなる。苦手。