託言

北欧に公共の場での喫煙を全面的に禁止している国が在る。英国(だったと記憶しているが自信は無い)でも検討されているらしい。喫煙は本人は勿論の事、周囲の人の健康をも損なう要素が在り、望んで喫煙している本人は兎も角、望まない周囲の人の健康を損なうから駄目だというのが主たる理由だった。一見、まともにも思えない事もないかもしれないが、しかし何でもかんでも禁止すれば良いというものではないし、そんな理由で成立してしまうのだったら他にも幾らでも禁止される物は在る。
例えば携帯電話。現在の日本でも電車などの一部のみ禁止だが電波が人体に与えるという理由で公共の場での全面使用禁止になってもおかしくはない。
例えば車。排気ガスは空気を汚しそれは当然人間の健康を損なうのだから公共交通機関以外全面禁止になってもおかしくはない。
多分、禁止にならないけれど。では何故、禁止にならないか。
メリットとデメリットを天秤に乗せ、デメリットよりもメリットの方は大きいと判断するからだ。健康よりも便利を選択するからだ。要は健康という事が問題なのではなく便利ではないという事が問題なのだろうと思う。
真に健康が問題だというならば極論すれば人間の健康の為に多くの第二次産業を止めるのかという事だ。そんな事は何処の国も行なわないだろう。
何故か。便利だからだ。そして金になるからだ。
公共の場での喫煙を禁止する事が問題なのではない。真の理由が健康以外に在るのにも関わらず健康を理由にする事に問題が在る。
公共の場での禁止が実現したら喫煙場所なども次々と減っていくだろうし、そうなったら家などの一部でしか吸えなくなる。それは喫煙家にとってはストレス以外の何物でもないだろう。
一度進み始めた方向の修正は難しい。間違いに気付いた時には方向修正が不可能な程に進んでしまっている可能性も在る。だから始める前に何処で境界線を引くのかをしっかりと考えた方が良い。重要なのは禁止する事ではなくて制御する事だ。
何処までも禁止にするのではなく或る程度の猶予は必要だ。何かを奪うのならば代わりを用意しなければストレスの吐き出し口が減っていくだけだ。それは禁酒法時代のようになる可能性を秘めている。かつてアメリカで成立した禁酒法はマフィアの資金を潤し一般市民の犯罪を増加させた。まさか同じような時代を再現したいわけでもあるまい。
大体、健康が理由で喫煙禁止が成立するならば酒に酔い暴れる、飲酒運転などで事故を起こす、などの危険性が理由で公共の場での飲酒が禁止となってしまう可能性も在るという事だ。そうなってしまう可能性を一体どうして歓迎出来ようか。