間違いと勘違い

在りし日の僕と僕以外の誰かの会話
「君のやっている事は間違っているよ。とんでもなく間違っている。そもそも君の考え方からして間違っている」
「僕の考え方が間違っている。それはそうかもしれないね。しかしだからと言って君の考え方やそれに基づく行動が正しいとは限らないだろう?たとえ君が正しいと思っていてもね」
「この場合においては僕が正しい。困っているからといって助けてはならない。相手が助けを求めたならば兎も角、助けを求められてもいないのに助けてはならない。それは行なってはならない事だ。そんな事をしたら困っていたら何時でも助けてもらえるものだと思い常に人に頼るようになってしまうからね」
「君は僕が間違っていると言うが、僕から見れば君は勘違いしているようだね。困っているからといって誰もが助けを求めるとは限らないという事。そして助けを求められない事も在るという事を失念しているね」
「この場合は助けを求められるだろう?」
「どうかな。求められない理由でも在るのかもしれないよ。それは僕達には分からない。本人にしかね。そして決定的に勘違いしているのは僕は困っているから助けたわけではないよ。僕がそうしたいと思ったから行なっただけだ。それが結果的に相手を助ける形になっただけだ」
「君は助けようとして助けたではないか」
「まあそうだね。でも相手の為に行なったのではないよ。君が決定的に勘違いしていると言うのはね、僕は僕の為に助けるという事をしたのであって相手の為にしたわけではないという事だ。君は絶望的なまでに相手の事を考えているのかもしれないけれど君以外の、例えば僕もそう考えると思うのは君の言うところの間違いというものだよ。僕は助けたいと思ったら相手が助けを求めなくても助けようとするし、助けようと思わなければ助けを求められても助けない」
「それで相手が常に助けてもらえると思うようになったらどうするつもりだい?」
「どうもしないよ。それは相手の問題だからね。僕にその原因の一端が在るのは理解出来ないわけではないけれど勘違いする者が勘違いしているだけなのだからね」
「やはり君のやっている事は間違っているよ。考え方も間違っている」
「僕が間違っているかどうかはどうでも良い事だ。君が間違っているかどうかと同様にね。重要なのは僕と君は違うという事だよ。そして僕は僕の思考に基づいて行動しているし君もそうだろう。だったらそれで良いだろう?それとも君は僕の行動を阻害しなければ気が済まない存在なのかな」
「そうではないけどね」
「だったら僕は君を排除する必要は無いね。お互い自分の思考に基づいて自分の行ないたい事をしよう」