僕はこたつが好きなのだが我が家には無い。数年前に何らかの理由(忘れた)によって撤去されてしまったからだ。
数年前のある日、こたつを捨てると聞かされた。
こたつで音楽を聴きながらごろごろしたり読書したりするのが冬の過ごし方の定番だった。雪見大福や蜜柑を食べながらこたつでぬくぬくとする一時は、寒い冬を耐え忍ぶ為の原動力だった。希望だったと言っても過言ではないと思われる。
それを撤去すると言うのだ。
僕は猛然と抗議した。必死で説得した。
だが僕の願いが受け入れられる事は無く、ある朝、こたつは消えていた。
粗大ゴミに出した、と言われた。
僕は悲嘆に暮れた。あぁ、祈りはついに届かなかったのだ、僕はこれからどうやって冬を乗り越えていけばいいのだろう、安穏としていられた日々は夢と消え失せ二度と返らないのか、と。あの時のあの感情は絶望といっても差し支えないものだろうと考えられる。

だから冬になると僕がベッドからなかなか出られないのは仕方が無い事なのだ。