過去からの来訪者

多少の余韻は在るとはいえだいぶ落ち着いた。
で、何が在ったのか。僕は現在、週に何度かジムに行ってる。何度も記した。そこは最初に会員証を提出してからロッカールームに行くようになっているのだけど、財布から会員証を出し(つまり下を見ていて受付の方は全然見ていない)そのままロッカールームに行こうとしたら後ろから声を掛けられた。最初に「えっ!?」と思い振り返ると受付に過去にバイトをしていた時の知人が居た。笑顔で。
わーっ!最悪っ!
しかも、そこそこに仲が良かったっぽい。推量なのは余り覚えていないからなのだが、では何故に仲が良かったようだと思うのか。「石動さん」と呼ばれたのではなく「いーちゃん」と渾名(あだな)で呼ばれたから。全くに興味が無かったらわざわざ声を掛けないだろうし、そんなに親しくない間柄ならば「石動さん」とでも呼ぶだろう。僕の記憶力の悪さは対人関係に特に発揮されるもので対人関係以外では覚えている事も在る。「いーちゃん」という呼び方は(僕の記憶力で間違い無くというのはおかしいけど)間違い無くバイト関係の知り合い。
僕は自分の過去が嫌いだ。(現在がその時よりも良いかどうかは分からないが)過去の未熟な自分の事なんて思い出したくも無い。僕が物事を忘れる一因はこの気持ちに在ると思う。しかし過去の知人というのは忌むべき僕の過去を当然知っている。そして遭遇すれば否応なく僕に過去を思い出させようとする。だから現在まで関係している知人は兎も角、途切れた過去の知人というのは可能な限り遭遇したくない。覚えてない人と話すのも辛い。過去の知人との遭遇は三つの意味で最悪。呼び掛けられた時は危うく「げっ!」とか言いそうになった。
表面上は冷静を装いながらも内心は衝撃により茫然自失。頭の中は真っ白。多分、冷静さも装えてなくて挙動不審気味だったと思う。少し話をした後に逃げるようにロッカールームへ。次回以降に遭遇した時に問題無いように運動しながら関係する出来事を思い出す。仲良くない人だったならこんな気遣いも必要無いのに。と思いながら余計な事まで思い出した。だから嫌なんだ。